国際系NPOでの事例

「みんなの意思決定をスムーズにするミッションをどのように設定できるだろうか?」という問いから始め、臨床心理学・発達心理学に基づく「対話に基づく関係構築能力が肝要」という仮説の元、組織文化・コミュニケーションツールを制作した事例。
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問いを問い直す

「みんなの意思決定をスムーズにするミッションをどのように設定できるだろうか?」という問いから始まった本事例では、まず問いを問い直すことから始めました。それは例えば「そもそもいまの意思決定はスムーズではないのか?」「スムーズな意思決定とはどのようなものか?」「メンバーはミッションという記号をどのように理解しているか?」といった形で、問いを精緻にしたり前提を問い直すような問いを持つということです。

そのような問いに置き直した時、必然的にメンバーへのDepth Interiviewが必要になります。上記のような問いを明らかにするための質問項目を検討し、各自1時間のヒアリングを行い、A4 120枚ほどのヒアリングメモを作りました。そのメモを元に、認識されている200の課題を抽出、更に概念を整理して20にまとめることで「私たちが組織について話したいと考えていること」としました。

合宿を行い「特に今、私たちが話したいこと」を絞り込んでいくために、その20の課題について多声性を持った対話を行いました。いくつかのグランドルールに則り、それぞれの感情から始まる対話によって、5つの課題に集約することができました。

その後、5つの課題の中でも因果関係や優先順位を検討した結果、対話的コミュニケーション能力を獲得していくことが重要な目標になることが明らかになりました(正確にいうと、そのような必要性をメンバーたちが相互的に構築し、最も重要だと位置付けたということです)。

対話に基づく関係構築能力

臨床心理学・発達心理学・コミュニケーション論・マネジメント・幸福研究・成人発達理論・組織文化など、関連する様々な領域の100冊を超える書籍をレビューし、組織のメンバーの関係に適切な形で提示しながら、その概念と実践の学習を集中的に行い、参考図書も提示することで追加的な学習の支援も行いました。

人間の変容に関する基本的な知識を身につけた後に、次に取り組んだのが「知識生産方法」の学習です。上記の理論はあくまで弊社が独自に作り出したものであり、クライアント組織が日常に用いる記号やコミュニケーションから始まっていない、いわば「借り物」の理論です。そうではなく、現場密着型で、自分たちの言葉で記号体系を作り、またそれを更新していく能力が中長期的に見た時には必ず必要になります。どんな理論も、現場に落とし込んでいく時に齟齬が生じます。

そこで、質的研究法などで用いられる基本的な方法を提示し、実際に組織で生じた「コミュニケーションのつまずき」を題材に、そこからどのようなことが学習されたか、個人の学びをいかに組織の学びに転換するのか、といった具体的実践を行い、自分たちの言葉で問題状況に密着した独自の記号体系を生産しています。

コミュニケーションのつまずきを率直に認め、そこから立て直してまた関係を結び直し、それを少しだけ一般化する形で現場に密着した「自分たちの道具」を手に入れることが、結果として元々の問いにあった「みんなの意思決定をスムーズにする」ための一助にもなった事例です。